その後、母の容体は落ち着いたものの、嚥下が以前に増して困難になってきました。
経口で摂取してゆくと、肺炎のリスクが高くなる。
点滴のみにしてゆくと身体のむくみがひどくなる、また、食べるという人間としての喜びを奪われてしまう。
どちらを選んでゆけばいいのか。在宅医と家族で話し合いの場がもたれました。
まだ、母に意識があるので、母の気持ちを最優先にしてゆくことにしました。
「口からものを食べていきたい?点滴だけにしたい?もちろん、途中で変更できるよ」
母は、口から、の方にかすかにうなずきました。
食べられるものを、無理せず摂れるだけ摂らせてゆくことになりました。
なるべくのど越しの良い、フルーツをつぶしたもの、プリン、ゼリー、アイスなど。
病人は、冷たいものの方を好みます。
また、母がむせ始めたら、食べさせることをすぐに止めるようにしました。
それでも・・・
一週間経たない間に、またムセからの呼吸困難・・・
そしてまたレベルダウン・・・
家族としてのエゴが、母の体力を奪ってしまってはいないか。
食べて体力つけて回復してほしい、という思いが、かえって母を苦しめていないか。
どこかで線引きをしてゆかないと母も我々も疲れ果ててしまうだろう。。。
お母さんが欲しがった時だけにしたら?、と、看護師さんがアドバイスしてくれた。
そうだよね、そうだよね。
母は、昨日あたりからよく眠る。
電池が切れてしまったように良く眠る。
オムツ交換していても目を覚まさない。
今日は訪問入浴の日だったけれど、洗ってもらいながら寝落ちていた。
目を覚ました時にゼリーでも、と思ってあげるけれど、「もういい」と言う。
静かに静かにいろいろなことが引き潮みたいに逃げてゆく。
悩もうが苦しもうが、そんな思いとは無関係に、いろいろなことが去ってゆく。
父はここ3週間ほどで、いきなりガーデニングに目覚めた。
庭も部屋も、お花でいっぱい。
朝顔も、ゴーヤもそのツルをぐんぐん伸ばす。
もうじき七月。