生活の手段であった車を取り上げてしまった形なので、父もストレスが溜まったことだろう。もう俺は死んだ方がいいのか?と問うてきたことがあった。とても悲しくなった。できる限り元の生活に近い形にしてやりたいと思い、趣味のゴルフ練習場の付き添いなど、やり始めた。
毎朝5時起き。散歩、洗濯、食事の支度(昼、夜分の仕込み含む)済ませて、ゴルフ練習場へ。練習場の受付には、父が軽度の認知症であることを告げ、何かあったら私に連絡してくださいと頼み込む。その後、急いで取って返してスタジオへ。午前中のレッスンを行い、練習場へ父を迎えにいく。昼食の支度、犬の散歩、夕飯の支度を整えて夕方からレッスンがある日は外出し、という生活。
3ヶ月ほどで私の方が参ってきた。が、ちょうどその頃、飲酒を続けていた父の体調も悪くなり、寝付いてしまった。10日ほど酒を絶ったことでまた元気を取り戻した父だが、認知の方はかなり進行してしまっていた。
が、そこにはありがたい置き土産が。ノンアルコールビールを、ビールと思い込むようになったのだ!今までどんなに試みようが、その手には乗らなかった父が!それだけ認知症が進行したということなのだろうが、ここは渡りに船だ!
父は、美味しいビールだ!と喜んでノンアルを飲んでくれる。神様、ありがとう、と心底感謝した。
ノンアルのお陰で、体力的にはメキメキ元気になったところで、再度父に問うてみた。「お爺さんお婆さんの話し相手や、お茶汲みなんかやるバイトあるけど行く?時給300円だけど」「行ってみるか!」ようは騙しだが、前向きに生きようとする父の姿が嬉しかった。