父のこと その4

生活の手段であった車を取り上げてしまった形なので、父もストレスが溜まったことだろう。もう俺は死んだ方がいいのか?と問うてきたことがあった。とても悲しくなった。できる限り元の生活に近い形にしてやりたいと思い、趣味のゴルフ練習場の付き添いなど、やり始めた。

毎朝5時起き。散歩、洗濯、食事の支度(昼、夜分の仕込み含む)済ませて、ゴルフ練習場へ。練習場の受付には、父が軽度の認知症であることを告げ、何かあったら私に連絡してくださいと頼み込む。その後、急いで取って返してスタジオへ。午前中のレッスンを行い、練習場へ父を迎えにいく。昼食の支度、犬の散歩、夕飯の支度を整えて夕方からレッスンがある日は外出し、という生活。

3ヶ月ほどで私の方が参ってきた。が、ちょうどその頃、飲酒を続けていた父の体調も悪くなり、寝付いてしまった。10日ほど酒を絶ったことでまた元気を取り戻した父だが、認知の方はかなり進行してしまっていた。

が、そこにはありがたい置き土産が。ノンアルコールビールを、ビールと思い込むようになったのだ!今までどんなに試みようが、その手には乗らなかった父が!それだけ認知症が進行したということなのだろうが、ここは渡りに船だ!

父は、美味しいビールだ!と喜んでノンアルを飲んでくれる。神様、ありがとう、と心底感謝した。

ノンアルのお陰で、体力的にはメキメキ元気になったところで、再度父に問うてみた。「お爺さんお婆さんの話し相手や、お茶汲みなんかやるバイトあるけど行く?時給300円だけど」「行ってみるか!」ようは騙しだが、前向きに生きようとする父の姿が嬉しかった。

父のこと その3

施設に着くと、エントランスまで聞こえるくらいの大声で「なんで俺をこんなところに連れてきた!こんなとこ居られるか!」激昂している。職員さんも困り果てていた。

なんとかなだめて連れ帰る。バッグの中からはあろうことか缶ビールが出てきた💦知らぬ間に持ち込んでいたらしい…施設長、ケアマネジャーから連絡入り、まあ出禁となりました。

その後、話し合う中で、アルコール依存がからむ認知症は、他の方とのトラブルが発生しやすく一般のディサービスで預かるのは難しい、一度精神科で診てもらった方がいいとアドバイスのような、最後通告のようなことを言われた。まあ仕方ないよね。

認知判断をしてもらった病院に父を連れて行き、相談する。精神科って一言で言うけど、どういう扱い受けるか知ってる?本人が嫌がると拘束されるんだよ。老い先短いのだから、飲ませてやるのも手だよ、アルコールからくる認知症だから悪化するけどね、と言われた。正直なところを言ってくれてありがたかった。縛り付けられてる父は見たくない。よっしゃ、うちで好きな酒飲ませて見守るしかないか、と腹を括った。

車の運転はさせられないため、鍵を隠し、本人には認知症が進行してると告げ、免許返納を促した。俺はボケてなんかいない、とがんばっていたが、警察から通告が来てる、と適当なこと言ってなんとか返納させた。

父はお酒とつまみ少々あれば大体はご機嫌だった。が、家族が仕事や学校で不在の間、ストックの酒が切れると、ふらふら徘徊するようになった。道がわからなくなってしまったり、6時間も戻ってこない時もあって、警察に捜索願いを出したこともあった。家を空ける時は、いつも気がきではなく、そして、大なり小なり毎日なんかしらの事件が起きた。

家族のバタバタをクールに見ているクウちゃん

父のこと その2

高速道路で降りるインターがわからなくなり、道に迷ってしまった一件から程なく、いつものごとく飲み過ぎによる体調不良期に陥った。

まず食欲がなくなり何も食べてくれない。身体が怠いらしく、ほぼ寝たきりとなる。水分だけは摂らせようとすると、そこは頭が回るらしく、ビール以外は飲まない、とがんばる。しかし口もきけないほど衰弱してくると経口補水液を摂取してくれる。がそんな状況が数日続き、意識も朦朧としてきている。このタイミングしかない、と迷わず救急車を呼んだ。

全ての検査異常なし。脱水症状とのことで点滴を打ってもらったところ、驚くほど元気になり、よたよたながら歩けるようになった。1週間近く酒が抜けていたせいもあるだろう。が、あれだけ何年も飲み続けて、内臓がなんともないとは、、、!丈夫なんだねぇ。。

が過度な飲酒は、身体のどこかを必ず壊す。父の場合は、それが脳に来てしまったのだ。

病院から戻った父は一見すると元気なのだが、言動がおかしくなっていた。まず、昼夜の逆転。夜中の2時ころに私の枕元にたち、「ご飯食べてないぞ」と起こしにくる。ある時は早朝4時に父の携帯から女性の声で「あなたのお父さんが犬を連れてはだしで畑で倒れて起き上がれないでいる!」と電話がかかってきたこともあった。また、あれが無い、これが無い、お前がどこかへやってしまったんだ、と毎日言い掛かりをつけてくる。こちらがやられそうになってきた。

脳神経外科に連れて行き、認知機能検査をしてもらう。脳の萎縮が見られ、初期の認知症であると。すぐ市役所に連絡し、介護申請手続きと同時に、24h父に張り付いている訳にいかないので、ディサービスを検討。市役所も包括センターの方もすぐに動いてくれて、通所も決まった。問題は父だ。果たしてディサービスに行ってくれるのか、、、。

「ディサービス」と言うと、最終地のような感じがあるらしく絶対に行かない、と言うと思い、「仕事に行くような感覚で、お昼も出てお風呂も入れるサービスが受けられる所があるんだけど行ってみない?」と声掛けしてみたところ、行ってみるか、と。

初日、ドキドキしながら送りだし、レッスンへ。だが、案の定、施設から電話。「お父さんが暴れてます、引き取りにきてくれませんか。」やはりやらかしたか、、、。